にじむネオン、濡れたガラス、すれ違うまなざし。
誰かの感情が、誰にも知られず通り過ぎていく。
　
この街には、名もなき孤独が無数に眠っている。
誰かの感情が、誰にも知られず通り過ぎていく。
　
ざわめきと喧騒に包まれた都市のなかで、
夜は、ときに恐ろしいほど静かだ。
誰かの感情が、誰にも知られず通り過ぎていく。
　
その静けさに飲まれそうになりながらも、
自分を保ち、いや、保てなくても「ジブン」という芯を持って、
ただ立ちつづけるしかない——
そんな強さと孤独を、僕はときどき垣間見る。
誰かの感情が、誰にも知られず通り過ぎていく。
　
それでも、
ふとした瞬間にだけ現れる“本当”がある。
それを、僕は見逃したくない。
誰かの感情が、誰にも知られず通り過ぎていく。
　
都市の孤独に、
僕は輪郭を描く。
　
Photographer：Kei Igarashi